こんにちは!災害と教育事業部わたげプロジェクトの篠田です。
今回は8月28日に開催いたしましたオンラインイベント「シリーズ災害と子ども支援#2」の報告を行いたいと思います。
今回2回目の開催となったシリーズ災害と子ども支援でしたが、今回は【避難所におけるインクルーシブな子ども支援】をテーマに、日本福祉心理学会の常任理事・常任編集委員を務めておられ千葉大学教育学部で教授を務めておられる石田祥代をゲストに招きご講演いただきました。また、認定NPO法人カタリバ職員の戸田氏、弊団体理事の伊藤駿を交えたパネルディスカッション及びカタリバと弊団体による熱海学習支援の活動報告も加えて行いました。
石田先生の講演
石田さんの講演では、「避難所におけるインクルーシブな子ども支援」というテーマのもと日本における教育現場での子どものケアや包括的支援(インクルーシブ)での現状と課題、そして東日本大震災などの過去の災害時における子どものケアにあたっての課題や重要となる点についてお話いただきました。その中でも今回は講演内容をいくつかのポイントに分けて簡潔ご紹介します!
①避難所生活における子どもの課題
当然ながら、災害時での避難所生活を送るにあたって様々な問題が発生します。その中でも子ども達は避難所生活を強いられる上で様々不安を抱えます。学校での勉強や日常的な遊びの機会がなくなることによる不安やストレスはもちろん、「家庭の不安」も子どもに大きな影響を与えています。この先の暮らしや仕事はどうなるのか、家に戻れるかなど、避難所生活を送る子ども達には自分の不安とストレスに加え、常に周りの大人たちの不安が取り巻いています。また、ひとり親家庭や乳幼児のいる家庭、親が持病を持っている家庭の子どもなど、被災前から多様なニーズを持つ家庭にも目を向けなければなりません。これらの諸問題には社会福祉士やソーシャルワーカー、精神保健福祉士などの専門家がいち早く被災現場に行き支援することが何より重要になってきます。
また、様々な特性をもった子どもがいることも忘れてはいけません。何らかの障がいがあったり、性的な悩みを抱えたり、外国籍であったりなど、一人ひとりが抱える問題とニーズは様々です。災害時の子ども支援は、このような多様なニーズが存在することを前提条件に考えていなければいけません。
②インクルーシブ教育とは何か
「インクルーシブ教育」という言葉の捉え方や考え方には様々なものがありますが、私は子ども一人ひとりの多様性を受け入れる体制をつくり、ニーズを満たせる教育だと思っています。高校進学率が98%を越え、非常に多くの子どもに教育が普及した日本ですが、次は様々な事情や背景があっても学校教育を受けることができる社会を目指すべきだと考えます。これからの学校教育には、子ども一人ひとりの特性やニーズに柔軟に対応し、多くのアイデアを試してみる姿勢を大事にし、地域で多様なニーズに答えられる環境を作ってゆくことが重要だと考えます。
③インクルーシブ教育の視点で避難所での子ども支援を考える
避難所における子どもの居場所づくりに関しては、「みんなで○○しよう」という発想は実はあまり良くありません。多様な子どもがいると同時に一人ひとりにそれぞれのニーズがあるため、むしろ場所や時間を隔てることで一人ひとりのニーズに合わせた支援の方が有効的だと考えられます。他にも、年齢や学年で空間を分けたり、子どもにあった遊び道具を用意したり、強制でなくあくまで「参加したい時に来てね」という声掛けを行うなど、子ども一人ひとりのニーズにできる限り応じるための取り組みを行うべきでしょう。
また、うまくいったことが次もうまくいくとは限らないため、子どもの反応に柔軟に対応していくことも合わせて重要です。
最後に
私がこの講演を聞いて印象に残ったことは、石田先生の「インクルーシブ教育は多様な子どものニーズを満たせる教育である」という視点です。しばしインクルーシブ教育はすべての子どもが同じ場に集まり学ぶことと捉えられますが、石田先生の捉え方は「存在する多様なニーズに答えてゆく姿勢が大事」という意味で教育や福祉の枠を越えたメッセージ性があると感じました。障がいに限らず、一人ひとりに特性があることを踏まえてそれらのニーズを満たそうとする姿勢は、学校教員や専門家だけでなくすべての人が持つことができるように感じます。また、最後の避難所における個別化された子ども支援のように、自分の価値観にとらわれずに相手にニーズがあるのかを考えることも重要だと学びました。
最後に、今回イベントでいただいた計55,000円の参加費はすべて熱海市での支援活動に使用させていただきました。ありがとうございました。
今後とも、連続講演イベント「シリーズ災害と子ども支援」及び災害と教育事業部わたげプロジェクトをよろしくお願いいたします!