みなさんこんにちは。「ギフテッドプロジェクトsprinG」の大学生スタッフ、はるかです。
今回は、5月27日に開催いたしました、「当事者との交流会」「継続親の会」について、その概要をお伝えしたいと思います。
ギフテッド当事者による対談
今回の親の会では、前半で、ギフテッド当事者による対談が行われました。対談のテーマは、「すごくなくても、生きていける」。sprinGに所属する大学生と、「デザインの専門家」としてフリーランスで働く社会人の2人が「『すごくない』ギフテッドの生き方」を軸に話し合いました。
参加者の皆様も、お2人のハイスピードでエネルギッシュな議論に圧倒されていましたが、終始和やかな会でした。
お2人の対談は、以下の4つのテーマに分かれて行われました。
以下では、各テーマでの詳しい様子についてお伝えします。
1. 自己紹介
まずは、当事者2人の自己紹介です。それぞれが現在までの年表を作り、どんな人生を過ごしたかについて語りました。2人とも非常にクリエイティブなエピソードをお持ちでした。以下はその一例です。
・自分で団体を立ち上げ、カフェで様々な分野の個展を開いた(社会人)
・クイズ研究会で学内外を超えた友達ができた。模試で余った時間に短歌を作っていた(大学生)
しかし、楽しいお話とは対照的に、困難さを示すエピソードも聞くことができました。
・応用をするとなると成績が良いものの、基礎過程は全くできなかった(社会人)
・大学に進学し、学習の難易度・周囲のレベルが上がった。多くの努力が必要になる場面が初めてで苦労した(大学生)
お2人とも、自分の興味のあることを追求するために、試行錯誤を繰り返してきたことがとてもよく伝わりました。
2. 生き方や特性の共通点・相違点
続いては、2人が互いの共通点・相違点について話し合うパートです。
2人の共通点としては、「義務教育でつまづきを抱えた」「なんだかんだ『真面目』である」「人に助けてもらった経験が多い」「興味関心があることを仕事・専攻にしている」といったことが挙げられました。
これに対して、2人の相違点は、「衝動的かどうか」「外交性の高さ・低さ」「親の特性に対する見解」とのことでした。特に「健やかに育つには、特性に対する家族の理解度が重要だ」ということが強調されていました。
お2人は、ギフテッドという特性こそ共通であるもの、それまでの人生や学んできたことは全く異なる方々です。それにもかかわらず共通点が多く挙がったことに驚きました。そして、保護者との関わりも人生に大きく影響するのだと再認識しました。
3. 『すごくない』我々が生きていけた理由
ここまでのトークでは、両者が口を揃えて「我々は決して順風満帆な人生を送ってきたわけではない」と話していたのが印象的でした。「ギフテッド」というと「神童」「天才」と思われがちですが、2人の生き方はそうした形容とは程遠いものです。
このパートではそんな2人が「なんとか生きて来られた」理由や、今まで気付いた生きていく上で大事なポイントについて話してくれました。ふたりのコメントは、
・自己理解、特に得手不得手の認識が大事。できるものはできるしできないものはできない。
・不得手に対しては、技術と資本と仕組みで対処する
・大きな挫折に直面する前に、「ほどよい困難」の設定と挑戦が必要。「ほどよい困難」に挑戦することで自己肯定感が育ち、努力の方法を学ぶことができる。しかし、子ども時代は親や先生(または周りの大人)がその環境を作らなければならない。
とのことでした。自分で自分のことを理解し、やる気や努力ではなく仕組みに頼る。なかなか難しいですが、大事ですね…。また、お2人自身は自分の人生を「順風満帆ではない」と認識していたのが印象的でした。その苦労の中で何とか生きていくための対処を自分で考え、身につけてきたことに対し、尊敬の念を覚えました。
4. 質疑応答
最後に実施した質疑応答では、sprinGに参加されている保護者の方々から様々な質問が寄せられました。その一部をお届けします。
Q. 「友達」という言葉のイメージは?ふたりの友人関係は?
A. 母が、本人の友人に本人の特性を教えていた。それでも付き合ってくれた友人がいた(社会人)。
A. 友達は非常に少なく、クラスで起こっていることを傍観しているタイプだった。殆どの同級生と話が合わなかったが、なぜこうなっているのかわからなかった。自分ができない子だから、周りに合わせられないと思っていた(大学生)。
Q. 「程よいチャレンジ」とはどんなものを指す?
A. 自分のポテンシャルで乗り越えてしまえることは「チャレンジ」ではなかった。個人的にチャレンジだったと思うのは、高校で熱中した競技クイズ。知っている領域と知らない領域の差が激しかったため、努力して苦手な領域を克服した。もちろん特性や興味によって何がチャレンジになるかは異なる(大学生)。
A. 「こなしたから達成した」という認識だと、成功体験になっている気はしない。その人固有の何かに対して、成功できれば成功体験と言えるのかも(社会人)。
保護者の方同士の話し合い
後半は、保護者の方々でのグループワークが行われました。2つのグループに分かれ、お子さまの近況や、悩みについて話し合いました。大学生も話し合いの場に参加や見学をしました。
1つ目のグループでは、テストに向けて精神的に追い詰められてしまう子、受験勉強になかなか身が入らない子など、進路や勉強についての悩みが多くありました。また、自分の子どもに対して期待をしたり、喧嘩になったり、と接し方について悩みを抱える方もいらっしゃいました。このグループには大学生の当事者も参加しており、「生きてるだけで疲れるな、という感じ」「ルールより、自分のペースだった」と子どもの頃の思いを話していました。
2つ目のグループでは、社会人の当事者との質疑応答で盛り上がりました。反抗期のことや、兄弟との関係などについての話があがりました。また、保護者の方同士で、お子さまの近況や、支援にどのように繋がったかなどについて共有していました。
私は、これらのやり取りを聞いて、ギフテッド当事者と保護者の方が話をする機会を作ることの重要性を強く感じました。ギフテッドの子どもたちが感じる困難さや違和感は言葉で表現することが難しいことがしばしばあると感じています。同じような感情を抱えた経験のある大学生や社会人の当事者が、その感情を説明(解説)し、大人になった今、当時を客観的に振り返ってどう思うかなどを話してくださる機会は貴重なものでした。
おわりに
ギフテッド特性を持つ方が、どのような子ども時代をすごし、どのように生き抜いてきたかを知る良い機会となりました。また、子どもたちはどうしたら安心できるか、自分の力を発揮できるか、それは人によって大きく違うことを実感しました。私が子どもたちと関わるうえでも活かせていけるよう、努力する所存です。
この会に参加した他の大学生にも感想を聞きました。
【当事者による対談について】今回、当事者のお話を聞き、1番思ったのは、「周りを助ける」ことと、「周りに頼る」ことが重要だと思いました。「周りに頼る」だけでは自己肯定感が上がらないので、「周りに頼る」ために、「周りを助ける」ことが大切だと思いました。逆に、この2つのどちらかが欠けてしまうと総崩れになる可能性があると思いました。今回、私自身すごく興味のある分野であるギフテッド当事者のお話を聞くことができていい経験になりました。
【保護者の方同士の話し合いについて】受験やテストに関するお話が多く出た親の会でした。テストが近づいてくると、先生は、「勉強」を半ば強制することが多くの学校であり、それが子供の負担になることが多いというお話でした。これは勉強ができる子にも、できない子にも負担になることだなと思いました。
これからも「ギフテッドプロジェクトsprinG」は、子ども・保護者の方々双方に寄り添えるような企画を作っていきたいと考えています。
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