ウクライナ情勢に寄せて(理事 伊藤 駿)

伊藤のROJEでの活動として、2020年2月、3名のメンバーがウクライナのキエフ、チェルノブイリ、ジトーミルを訪問し、原発事故の伝承に関する調査と子どもたちとの交流会を行う機会をいただきました。

先日より報道されているウクライナ情勢について、日に日に厳しい状況を伝える内容が目につき、心を痛めています。一日でも早く平穏が訪れることを、心から祈っています。

さて、これまでに特に私がウクライナの先生方、子どもたちと交流を行っていたことから、多くのメディアよりお問い合わせを頂いております。私は一人の研究者であり、その研究の遂行には多くの税金や助成金を頂いていることから、私が答えられることは答えるようにしています。ただし、国際関係論等の専門家ではまったくなく、また無責任な解説も、紛いなりにも大学教員という立場である以上行うべきではないと思っております。そのうえで、現状私の言える範囲のことを書かせていただいております。

現在も私はウクライナ在住の方々とやり取りはできています。先週も大学の方でウクライナの専門学校生との交流イベントを開催しましたが、そのときにはどちらかと言うと、「不安はあるけど大丈夫」「ポジティブに考えている」といった日常が続いている印象を受けました。しかし、ロシアの侵攻が報道されて以降は、「これから先の予定を全部キャンセルしないといけない。家から30分のところで爆破があった」といったように、これまでと打って変わって不安や身近なところでの戦闘の情報などが入ってきており、深刻な状況と皆さんの不安が伝わってきています。

ROJEでウクライナとの交流をもたせていただいたきっかけは、東日本大震災の被災地での支援活動です。ウクライナで起こったチェルノブイリ原発事故の知見を福島の子どもたちの支援に活かしてほしいということで活動されている方とつながりました。また私たちは災害時の緊急子ども支援を続けており、子どもたちの学ぶ権利が毀損してしまうことの影響の大きさを身にしみて感じています。お一人お一人の命が最優先であることは間違いありませんが、今回の情勢下においても児童の権利に関する条約が遵守され、子どもたちの権利がきちんと保障されることを心から祈っています。

他方で私たち日本に住んでいる人間として、そして教育学の一研究者として、ぜひ皆さんに考えていただきたいのは、日本に住む、ウクライナやロシアに繋がりを持つ人々、子どもたちのことです。今日本ではロシアに攻め込まれるウクライナという報道がなされていますが、それはロシア、ウクライナとつながりをもつ人々の問題とは異なるものです。私の専門の教育学に寄せるならば、学校にいるロシア、ウクライナにつながりをもつ子どもたちのケアを教員をはじめとする学校関係者、そしてその他の方々にも第一に考えてほしいと思います。子どもたちにも、目の前にいる友だちが加害者ではないこと、そして私達に求められているのは分断ではなく連帯であること、一刻も早い平和、平穏を祈ることをぜひ伝えてほしいと思います。決して、子どもたちの人権が蔑ろにされることはあってはいけません。

ROJEでも今後、特に子どもたちの支援という観点でできることを速やかに行っていきたいと思います。

最後になりますが、一刻も早く平穏な時間が訪れることを心から祈っています。

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