【取材】西矢大亮先生


西矢大亮先生に関西教育フォーラム終了後にインタビューを行いました!

 

_関西教育フォーラム2015が終わっての感想をお聞かせください。

 

隂山先生、若槻先生お二方の話を聞くことができ大変良かったです。すぐに学校に帰って子どもたちに還してあげたいと思います。今日、隂山先生、若槻先生がおっしゃっていたことが、そっくりそのまま学校の現場に当てはまるということは少ないと思いますが、形を変えたりして子どもたちに還すことができる内容がありましたので、学校に帰って他の先生と今日の講演の内容を共有したいと考えています。

 

_今の学校に必要な人材、もっとこのような人がいれば良いと思うのはどのような人でしょうか。

継続して学校に携わってくれる人が欲しいです。単発での関わりですと、やはり子どもとの関係の築き方などの面で難しいところがあります。可能であるならば、細く、長いお付き合いができるような人がいれば、子どもにとっても良いと思いますし、先生としても安心感があるように思います。それは学生であってもいいですし、地域の方でもいいと思います。ただ、長いスパンで関わってくれる方がいると学校は大変助かります。

先日の全校遠足ではROJE(本フォーラム主催団体)のスタッフにも同行してもらいました。普段、子どもたちが大学生と触れ合う機会はまずありません。親戚に大学生がいない。または親が大学生を経験したことがない場合もあるわけです。子どもにとって大人としてのモデルが親以外に無い中で、大学生に子どもが「大学ってどんなところなん?」と聞き、大学生が「楽しいところやで」と返すような、生のキャッチボールを子どもが経験できるのは貴重です。子どもはテレビで大学という言葉を見ることがあっても生で出会う機会は多くありません。そういった意味では今回、全校遠足に来てもらった、単発での関わり方であっても、子どもにとって有意義な経験であったと思います。

 

_学校に入っている専門職員の方は長く学校に携わっているのですか。

同じ人がずっと来てくれています。丸1日ではありませんが週5日間、2時間目から5時間目といった形で来てくれます。それは茨木市の事業で派遣されている専門支援員です。一方でボランティアの学習支援をされるような人はあまり多くありません。近くに大阪大学があるのでその中で、少しボランティアで学校に入ってくれる人たちが2年程前から来てくれるようになりました。大阪大学の研究で週に1回3年間、継続的に子どもたちに関わってくれています。これは特別なケースですが。やはり欲をいってしまえば、時間は少なくとも、継続的に関わってくださることが学校としては望ましいと思います。来てくれていたとしても、それが途切れてしまったりすることはありますが、来てくださるのであれば月に1回1日だけでも学校は嬉しいですね。

 

_学校で新しい取り組みを実践し続けていくために必要なのはどのような体制でしょうか。

 

1つ目に郡山小学校はまず他の学校と比べて教員に関わる人員が多いということがあります。専門支援員や算数の少人数加配、日本語指導の先生の3名がいます。その方々が普通の職員として学校に携わっているので、やろうと思うことを実現することをある程度は、負担を分散させて進めることができます。

2つ目はたくさんの取り組みを進めていく中で、仕事量がちょっと多くなってしまったなら、やっていることは本当に効果があるのか、やっていることに対する効果を理解することです。判断の上で無くしている取り組みも結構あります。また、取り組みの大枠は残しつつもマイナーチェンジをするといった形で改善を加えています。

 

_西矢先生はその中でどういった役割をされているのでしょうか。

 

私は小学校4・5・6年生の算数を担当しているのと、自治活動を推進する取り組みのメンバーをしています。また学校全体の取り組みを進める学力保障委員会の長もやっていて、学力の向上、学力の保証をするためにどのような取り組みができるかといったことを進めています。その委員会の長なので、自分のやってみたいことをやりやすいというのはあるかもしれません。市の委員会とも連携しているので、市のやりたいことと学校がやりたいことを繋げるポジションでもありますね。例えば市から小中連携でこんなことをしたいと思っていると提案された際に、それを郡山小学校の実態に合わせて導入していくといった調整をすることも担っています。最終的に「子どものためになる」ということを大事にしてやっています。

 

_作り上げてきた実践は発信などされているのでしょうか。

 

小学校間または中学校間や地域の高校、幼稚園と情報を交換することはあります。月に2回、3回とお話しする機会を設け、密に連携を取っています。しかし、それを地域に発信しているとすれば、それは校長が発信している学校だよりや直接お話をするということぐらいだと思います。そういった意味では、学力保障委員会としてこのような取り組みをしていますという発信をすることはできていないと思います。今日のお話を聞いて、発信しなければならないと感じました。学校で良いことだと思って労力をつぎ込んで推進していることはもっと地域の人に理解してもらう必要があると思います。発信できるようなホームページなどがあったらよいのですが。

 

_私たちROJEが運営しているEDUPEDIAという先生の教育実践を紹介しているWEBサイトで全国様々な学校の取り組みをご覧になることができますし、可能であれば、自身が取り組んでいる実践を発信することができます。WEBサイトを利用するという手段もありますが…

 

学校の中のことで、精一杯という部分もあります。人が入れ替わっていく学校を支えるだけで、かなりの労力を割いてしまいます。そこにプラスして発信に労力を割くという視点は少なくなってしまっているとは思います。

 

_学校を充実させるための様々な仕組みの発想の源泉となるのはどのようなことでしょうか。

 

元々、本校が20年以上をかけて作り上げてきた土台の上で、今の子ども、そして先生とどうやっていこうかというすり合わせをしていかなければなりません。そしてその作業と同時に、市の事業である先進都市視察事業に参加して、横浜の学校へ見学しに行ったこともあります。それぞれ違う枠の中で頑張っている学校を見に行くと、やはり、学校全体が同じ方向を向くことが最大限の効果を生むことがわかります。2年生はやっているけど、3年生はやっていない、4年生は頑張っているけれど、5年生はあまりやっていない、となると積み上がりが全くできないといった問題が出てくる。このような取り組みは、学校全体でやっていかなければなりません

しかし特に忙しい4月に今年どのような取り組みをするか全体で考える余裕はありません。ですから、例えば今年は縦割りで力をつけさせるだとか、子ども自身に発信させようなどの案を各々が持ち帰って、実現することができそうか、どの部分で実現できそうだというような考えを職員が話し合う中で共有し、共通理解を生んでいます。

新しいことはやはり労力もかかりますし面倒だと考えてしまうかもしれません。しかし、「これをやってみたら子どもたちを変えることができるのではないか」といったわくわく感を大事にしながら進めていきます。少し労力がかかるかもしれないが「こんなことをしてみたいな」といったことをまず提案し、教室の実際に合わせて形を変えながら皆で取り組みを進めていきます。

 

_他の小学校が郡山小学校のように子どもたちの基礎学力向上のため新しい取り組みをどんどん回していけるようになるための第1歩として、どのようなことが挙げられますか?まず、何から変わっていけば良いのでしょうか。

 

すごく難しいだろうと思います。私の初任校は駅前のマンモス校でした。裕福な家庭が多くて、あんまりしんどい思いをせずに教師ができるっていう環境もあります。そうなると自分が授業をして楽しいとか、「これどうよ?」というような、教師のおごりってちょっとどこかにあると思うんですよ。それについてこれる学校ならそれはそれで回ります。ただ、自分の実践についてとか学校としてどうなのかと振り返ることがありません。学級王国と言われるように、基本は人が教室に入らないんですね。だから気づきが少なくて。郡山小学校の場合だとそんな独りよがりな授業をしたらまず子どもが学ばなくなります。子どもがついてこれなくなったら、「なんでやろな」って1回自分の実践が崩れますよね。崩れるし子どもとの関係もなかなか上手く築けないんですよ。そこでもう1回学び直さなあかんなっていう動機がないと、変わっていくのは難しいやろなという印象です。

それがなくてもね、色々な研究会や研修会などに参加して、学ぼうとすればできるんだけれども、リアルに自分の教室がそうじゃないのに、自分のスタイルを変えてまで子どもに寄り添ったりとか、その学校のやり方に「やろう!」って同じ方向に向かっていくというようなことは、なかなか思うようにいかへんのじゃないかなとも思います。トップの校長がリーダーシップをとりながら、ベテラン教員と若手教員がうまく会議を回して変えていくっていうことができなくはないと思うんですけど、ちょっと難しい気はしますね。ほんと学校の実情っていうのは、ひとくくりに「公立小学校」って言うけど全部違うから。ちょっと横の学校行くと全然違うし、それぞれ独自の世界を持ってるんですね。まあ運動会はあるし給食はあるしでその辺の大枠が一緒ですけど。でも考え方とかその学校がやりたいこととか子どもの実情とかって全然違うので、ありきたりにこうすればとか、例えばうちの郡山小学校の実践をそのままやったとしてうまくいくか言うたらいかないと思うんですよ。

だから教員は、その学校に行ったときにその学校の実態とかカラーっていうものを1年目に学ぶっていうことがないと、しんどくなる先生がでてくる。うちの学校に来た先生も、やっぱりしんどくなる先生がいるんですね。なんでそんなことまでしなあかんのとかは実際あるし。でもそこで、「私は今までこうしてきたけど、やっぱりこの方が子どもたちにフィットするわ」とか、「この実態この効果やったらその方がいいかな」っていうように自分から学んでいける先生なら変わっていけるんですが、学校全体を変えていくっていうのはなかなか実態は難しいという印象ですね。

 

_これから地域と連携しようとか学生をどんどん受け入れていこうという話があるときに、現場には本当に多様な子どもたちがいると思いますが、接するときのコツを教えてください。

 

本当に子どもってみんな違うじゃないですか。だから、まず子どもたちに「聞くこと」は大事だと思いますね。結構こっちから「どうよどうよ」って聞くようなアクティブな関わり方ってあると思うんですけど、それはしんどい学校では遮断対象になるかなと。いや自己肯定感が高くて、明るく朗らかで学力も高い学校ではOKだと思いますよ。ただうちの校区においてはアクティブに行くと遮断されることが多かったです。だから本当に何気ない、聞くっていう姿勢が大事なんかなと。最初は聞いても答えないんですよ。恥ずかしさもあるだろうし、めんどくささもあるだろうし、この人なんやねんってのもあるやろうから。でも何気ない日常を聞くっていうことが、関係的にはしっとり入っていくんちゃうかなって。一見さんやったら、「わーっ、ぎゃーっ」ってなって、「じゃあねー!」で終わるけど、継続的に付き合おうと思うと、この人やったらなんか聞いてくれそうっていう印象を持ってもらう方が、心を開きやすいと思います。

 

_担任を持たれていない西矢先生の立場だと、地域の人や学生のように新しく入っていくという立場にどちらかというと近いと思います。どのような場所・タイミングで「聞くこと」をされていますか。

 

授業中や廊下ですれ違ったときもあるけど、給食の時間もあります。全教員が各教室2人体制で配膳指導に入っているので。あとは4,5,6年生に休み時間、「宿題できたか?」

って聞くこともあります。

もちろん学習の話はするけども、そのあとにやんわり1個くらい、「最近どうなん?」レベルは聞くようにしています。あんまり私は自分のことをたくさんしゃべったりしないので、子どもが言いたいこととか聞いてもらいたそうなことは何かなというのを聞いて関わっています。

 

_もし他の学校に移ることになったら、すでにその学校にある持続性の中に分け入っていくことになると思います。その中で自分のスタンスで企画を考えていかないといけなくなりますが、どのように関わり始めますか。

 

2校目はバルセロナ日本人学校に3年行きました。もちろん1校目と全然違うし、また3校目日本に帰ってきても全然違いました。最初は本当に苦労するんですよ。教員って今までやってきたことを誇りに思って結構されてると思うんですけど、例えば集団作りではこれうまくいった、学力ではこれうまくいったっていうのがどうしてもあって、でも良い部分しか残っていないことが多いために、最初苦労する。でも苦労する中で吸収していかなあかん学んでいかなあかんなあと思います。

ただ全てをリセットする気はなくて、やっぱり子どもの話はしっかり聞かなあかんなあとか授業でいわゆる学力高い子だけを引っ張っていくんじゃなくて、やっぱりしんどい子も含めて学力を付けていかなあかんなというスタンスとか、そういったものは引き継ぐべきだと思います。どうしても学校って事情が変わってくると取り組みが変わってくるので、そこに関してはその意志を持ちながら、どこに参加していくかという感じですね。

 

_多様な子どもたちと向き合うときに重要なのが「聞くこと」と伺いましたが、西矢先生は子どもたちにどんなことを聞いていますか。

 

しんどい状況を聞きだすという目的では聞いてないんですけど、まあ気になる子にはね、意図的に聞くことはあります。うちは学年が単学級なので低中高って3つに分けられてるんですよ。私は高学年部会に所属しています。5,6年生の先生と支援の5,6年付きの先生とあとは日本語の先生と、私の5人でチームを組んで、週に1回月曜日に学年部会っていうのをやっています。そこで週に1回必ず子どもたちの様子を聞くんですよね。「5年生は今この子がしんどくて、こんな差別発言があったよ」とか。「6年生は今この行事に向けて頑張ってるけどこの子とこの子が気になんねん」っていうのを聞いていて名前上がってる子は私も気になるので、意図的に、「元気なん?大丈夫?どう?」っていう感じにはある程度聞きますね。

子どもの生の声を聞くっていうのは意外と次の取り組みに活かせます。例えば「ゲーム・テレビを1時間以内にしましょう」っていうのをちょうど先週から始めたんですけど、そうすると4年生の子が「先生、先生」って言いにきて。聞いたら、「テレビゲーム1時間以内になったから自主学習ノートやってん」ってノートを見せに来るんですよね。それがあんまりシャットダウンして距離をとってしまう先生だと言いに来づらいじゃないですか。でも聞くスタンスを持っていたら、まあ子どもは言いたい派が基本多いと思うので、自分から言いに来てくれるんですよ。もちろん聞くのが苦手な子はこちらからしゃべりかけることはあるけども、そういう風に子どもから言ってくれると、「そうか、やっぱりゲームテレビの時間が減ると家ですることなくなるんや」っていうことがわかる。その時に自主学習をやった子をめちゃくちゃほめて、すぐ次の授業が5年生だったんで、全然関係ないけど、「テレビ・ゲームを1時間以内にしたから、4年生で自主学習やってる子おったわ」と話す。今度はそれ6年生にも言うんですよ(笑)ほんなら、「そっか、確かに時間なくなったらなんもしてなかったな」って子がいてたら、「あ、勉強する時間でもいいんや、勉強する時間なんや」っていうのを自分で気づける。こっちから勉強しろじゃなくて、まずやった子をほめるっていう。

それで次その4年生の子がね、「自主学って、あんまりやるネタがなくて…」みたいなことを言うんで、「じゃあ、5,6年生に聞いといてあげるわ」って言って、アンケートをとるんですよ。ちっちゃい付箋なんですけど。今までこんなこと取り組んだっていうのを、例えば芸能人調べたとかそういうゴシップ的なことも含めて、子どもらってアイディア豊富でいろんな自主学をやってる。それをまたみんなの前で発表するんですよ。ほんなら子どもたち、「そっか、そんな面白いやり方あるんや」って。

だからこんな風にして、子どもとしゃべったことからヒントをもらって、学校全体のものにするっていう役目かなっていうのを思っています。やっぱり担任だとどうしてもクラスの中だけを回すというか。クラスの中で学力がどうかとか、クラスづくりをするので。それを学校全体に広げていくのが役目。うちの学校ってそんなに大きくないんで、まあそういった意味では、やりやすさはありますね。

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