陰山英男先生ご講演 「貧困はいかに子どもの学力を下げるか」


FB_IMG_1454254791322

 

 

 

 

 

 

貧困問題からなる学力低下と子どもたちの未来に対して何を取り組むべきか話していきたいと思います。

 

子どもの貧困問題は社会全体の貧困問題と関係していて、大きな問題です。このグラフは文部科学省のHPで公開されている全国学力テストの結果と親の所得を示すものです。お金をかけるほど学力は高くなります。しかし、1500万円以上を超えた所得だと学力が落ちると言われています。

 

先日、40年前に卒業した高校で講演をしました。40年前と比べて進路実績が良くなっていました。また全国学力テストで上位の福井県、秋田県は都市部と比べると 県民所得は高くないと考えられます。改めてこのグラフを読み解かなければなりません。このグラフは5つの政令都市100校を対象にしたものでした。つまり、都市の一部だけの話ということです。よって都市における貧困が厳しい状況になっていることが分かります。

 

このグラフでは就学援助も増えていることが分かります。各家庭の貧困が進んでいます。この原因は正規雇用と所得の問題だと考えられます。総理大臣が各企業に雇用を増やし、給与を上げるべきだと述べています。しかし、雇用は増えておらず、給与も上がっていないのが現実です。経済の問題と社会構造が関係していると考えられます。

 

これは所得と税金を示すグラフです。普通は高額所得者から高い税金を取って、貧しい家庭からは安い税金を取るべきです。所得の采配を税金でするべきであるのに、日本だけが再分配後に相対的貧困が上昇しています

文科省のデータで大学授業料を示すグラフです。国立大学の授業料は年々上がっています。国立大学の授業料が上がり始めたのは40年くらい前からです。当時、国立大学の授業料の値上げは国会をとめるほどの大問題でした。私が大学に入学した年の前期の授業料は1万8千円でした。それが後期になると4万8千円になりました。今では、半期で4万8千円でも安いと言われるでしょうが、当時は3万円値上がりしたので大学でストライキが起きました。所得の再分配を考えたときに低い所得の人にとっては厳しい状況が続いているのです。

日本の奨学金制度は確立できていません。アメリカは学費が高いですが、奨学金制度が確立しています。ハーバード大学は年間授業料が400万かかります。しかし、授業料をまともにはらっている人はそんなに多くないと聞いたことがあります。奨学金制度が確立しているのはハーバード大学がひとつの国ぐらいの財政を動かしているからです。

 

西暦2000年くらいから学力低下問題が挙げられています。今から15年前の1999年10月にNHKクローズアップ現代に出演した直後から学力問題が言われるようになりました。その当時文部省はゆとり教育を始め、教科書を3割カットしました。2002年に3割カットされた指導要領が施行されました。その翌年の2003年に国際学力テストがあり2000年にそこまで悪くなかった順位が大幅に下がってしまいました。そこからPISAショックという言葉が生まれました。最も新しいデータである2012年の順位は社会的にはあまり知られていません。読解力が4位になりましたが数学は7位となっており、さほど良くなっていません。科学は4位です。1~3位を見ると、中国の都市がランクインしています。国単位で考えると日本は1位になっているのです。国際的に見ると日本の学力は元の良い成績に戻っているのです。現在日本の教育は、脱ゆとり教育の取り組みとして小学校の教科書は36パーセント増加しています。小学生のお子さんのいる方は是非、小学生の算数の教科書を見てみてください。中学校の数学の教科書と変わらない厚さになっています。最近のランドセルは軽さが重視されています。それは、教科書の増加により重量も増えていることが背景にあるのです。教科書が3割増加しているのを知っていましたか?知られていないところで教育を語っても、良い方向へは変わっていきません。学習する量が増えたので週5日では教えきれません。それを解決するために土曜授業が実施されています。私は土曜授業に反対です。子どもたちの生活に負担をかけてしまうからです。

そして、不登校・いじめが増えています。一番恐れているのは、児童虐待です。どんなに学校で増加した教科書の範囲を指導しても、それを支える家庭が痩せ細っているのです。

学力は上がるかもしれませんが、家庭的な基盤を子どもたちが失ってしまうと不登校になってしまいます。ゆとり教育がもたらしたものは不登校問題です。

PISAショックのほかにTALISショックというのもあります。世界的に最も忙しいのは日本の教員です。学校教育をサポートするカウンセラーや図書館司書などは教員が賄っています。教員の勤務時間が非常に長くなり、燃え尽きてしまうということが起きています。

国公立大学へ進学する子どもが増えた、兵庫県朝来町立山口小学校での実践を紹介します。山口小学校は1学年50人ほどで田舎の小学校であるため東大、京大に進学したいと思う子どももいません。50人の中にひとりくらい国公立大学へ進学できれば良いという地域です。

まず、読み書き計算の徹底をしました。この取り組みは10年間持続しました。結果としては1993年度卒業した50人のうち7人が有名国公立大学へ進学しました。初等教育をしっかりと鍛えると後々伸びます。子どもたちの落ちこぼれは小学1年生での繰り上がりと繰り下がりの計算から始まります。

次に生活習慣を整えました。睡眠時間が短いほど学力は下がります。学習したことは睡眠時間に脳に定着します。よって昔の人は「寝る子は育つ」と言っていたのです。

もうひとつ重要なのは朝ごはんです。毎日朝ごはんを食べれば、成績は上がります。1回の食事に様々な種類のものを食べさせると良いです。

そして、百ます計算は毎日同じ問題をさせてください。そのほうが子どもたちの脳のトレーニングになります。新しい問題をさせたときもタイムは落ちません。同じ問題をすることで、日に日に簡単な問題に感じます。簡単な問題をするからこそ子どもたちの脳の働きを高めると学力も伸びるのです。東大生京大生の小学生時代の学習習慣は簡単な問題を繰り返し解いている子が多いです。短い時間で効率よく勉強しているのです。3日ほど同じ問題を解かなければ、脳には定着しません。

授業内容や問題を解くために言語力が必要です。言葉の基本である漢字を勉強するのが良いです。音読や読書で言葉に触れましょう。
基礎基本をしっかりと取り組むことが学力向上の肝です。生活の基盤や学習の基盤が特に都市部の階層の人たちを中心に崩れています。よって、 都市部の階層の人たちの基盤を整えることで学力向上へ繋がるのではないでしょうか。

アーカイブ

ページ上部へ戻る