【取材】鈴木寛先生


かんふぉ11

***関西教育フォーラム2014の感想をお聞かせください。

 

*すごくよかったです。来場者の満足度も高かったように思います。

というのも、質問の時間にあれだけ手が上がるシンポジウムは日本では珍しいし、質問もとても良いものでした。

質問のクオリティとその量に象徴されるように、フォーラムは成功だったと思うし、僕自身もすごく楽しめました。

やはり、関わったみんなの準備力と熱意はみのるものだと実感しました。

 

***苫野さんとのパネルディスカッションはどうでしたか?

 

*本当に最高でした。みんなが良い先生を選んでくれてよかったです。人選力の勝利だと思います。そのこともあり、これほど真面目なテーマにも関わらず、お客さんもどんどん増えていったしね。

また、熊本や広島から来場された人もいて驚きました。神戸など京都から離れたところからも、当たり前のようにお客さんが来ていたことは嬉しかったです。

これだけいろんなところから人が集まって、その人たちに満足していただいたのは、苫野さんが来てくれたからだと思います。

 

***鈴木先生と苫野先生はものすごく合っていたと思いました。

鈴木先生は語学よりも異文化理解が大切だと言っていて、苫野先生も自由の相互承認が大切だと言っていました。

その異文化理解と相互承認って言葉は似ていると思いました。そこで、「それを身につけるためにはどうすればいいか。」ということを、苫野先生は、「まずは自分自身を、信頼し、承認することが大切」と言っていました。

そこで、鈴木先生としては、異文化を理解する上でなにが大切だと思いますか?

 

*共通言語・共通関心ということです。例えば、サッカーは共通言語であり、共通関心ですよね。音楽もそれに当てはまります。一緒にハモれるし、バンドもできるかもしれない。音楽とかスポーツはそういうものをもっているし、かつ、それが損得の動機ではうごいていない。共感共鳴の動機で動いている。スポーツも一見勝ち負けだけど、いい試合をすることは、ある意味音楽同じように共演であると言えます。

僕がオリンピック・パラリンピックにこだわるのはそこにあります。スポーツは共通言語であり、共通関心だからです。

「おれもあの試合みた」。という共通関心があればどんな人とでも話すことができます。

英語話せても話題が合わなければだめですよね。

この間サンディエゴに行ってきたんですが、そこでもサッカーの話ですぐに現地の人と友達になれました。そこから「メキシコにサッカーを観に行こう!」となったのはびっくりしたが、サッカー好きの大人が4人小さい車に乗って観戦しに行ったことはいい思い出です。職業や立場をこえた繋がりが生まれた瞬間だったと思います。

また、そこで友達になった人とヨットにも乗せてもらえました。

一緒にヨット乗ったら、半日のセーリングでずっと前からの友達のように感じられるほど距離を縮められました。ぼくもそのスキッパー(ヨットの舵を握る人)もヨットの上で帽子を飛ばしてしまいましたが、帰るときにその人から帽子をプレゼントしていただき、その奥さんからはしょうがの砂糖漬をいただいた。こんな思い出一生忘れないじゃないですか。だから、スポーツや音楽や文化はこういうストーリーをつくれるんですよね。

 

***大学生になって頻繁に思いますが、グローバル化の社会だから「TOEICでいい点数くらいとっておかないと」や「留学くらいしておかないと」という情報に戸惑います。

そこで、鈴木先生はそのような情報を鵜呑みもせず、否定もせずと仰られていて、そのことはとても重要だと私もすごく思うのですが、しかし、そのバランス感覚を養うのはとても難しいです。どうしたらよいでしょうか。

 

*関西で学ぶ意義はそこにあると思います。東京ならそのような情報がもろに溢れていますが、その中で一歩引けることが関西の強みだと思います。

また、京都は歴史の重みというものがある。というのは、京都では1000年以上の歴史の視点からみることができます。その1000年以上の歴史からすれば、現在の動きと言うのは些細なことだと思えばいい。

グローバル化という視点でいうと、関西では遣唐使に始まり、はるか昔から今と同じような光景をみてきました。

あるいは、同志社大学の建設のプロセスにおいても混乱と狂騒の中でできたものでした。

さらにさかのぼると、室町時代も宋との貿易をどうするのかといったことがありました。このように歴史的に見ればグローバル化の流れというのは幾度となくあります。

 

常に日本は和魂漢才、今では和魂洋才という考えを取りこんできました。また、平清盛はグローバル化するために福原に都をうつしました。

ここ関西にいると、日常の中にグローバルの温故知新が存在します。そこが関西で学ぶ強さであり、西日本の強さだと思います。

 

この、関東での情報の喧噪と関西の一歩離れた立ち位置という、二極対立的なものが日本を豊潤とさせている。これらはどちらが欠けてもだめですから。

そこで、ROJEはそれを関東と関西で体現している。

今の学生団体のなかで、ここまでツイン構造がきれいに成立している団体はあまりないと思います。このような身近な関東と関西という異文化理解から、なにかを気づくことも大切です。

 

― そのことに関係するのですが、ビジネス関連書を読んでいると、京大生は東京から離れていることもあり、ビジネス的な部分で乗り遅れがちである。という記事がありました。

 

乗り遅れていることが特徴じゃないですか。そこが強みでもあります。

一歩、ワンテンポ置けるところが大切。東京の流れに飲み込まれないところが強み。

そのように大学にしても東京と関西の両極が存在するから、これまでの時代の変遷のなかで日本がつぶれずにすんだ理由であるとも思います。

 

― ビジネス関連書を読んでいると、よく京大生は批判されています。東京から離れているが故に、ビジネスの潮流から乗り遅れて全然ダメだ、と言われていますが・・・

 

乗り遅れていることこそが関西の人の特徴であり、強みです。

東京の論理から一歩引いて考え、飲み込まれないことがいい。飲み込まれるということはいいときはいいけど、悪いときは悪いから、いいように踊らされます。

 

京大生はまじめに働かないし(笑)

「それは本当に正しいんですか?」と斜に構えた奴も多い。でも、それこそが日本がつぶれてこなかった要因です。常に対局の考え方を持っておく。まさに1300年のバランス感覚。

 

― たしかに、みんな東京のメッセージに従順な、同じような考え方をするビジネスマンだったらつまらないですもんね。

 

そう。つまらないし、バブルが弾けたら何も生き残れません。

応仁の乱も、第二次世界大戦のときも大変だったと思います。でも関西の人々はそれを乗り越えてきました。それを思ったら、今の厳しい状況はちょっと風邪を引いたようなものです。

 

***鈴木先生は、熟議を積極的にされていますが、それは東京以外でもされていますか?

 

*大阪でやったこともあるし、名古屋でやったこともあります。

 

 地方によって人の違いは感じますか?

 

案外変わりません。

東日本もすごくいいです。青森とかすごくいいんだ。青森ってね、純朴であまり喋らない、みたいな誤ったステレオタイプなイメージあるでしょ。でも、7人とかの少人数で喋る機会を設けると、みんな立ち上がって勢いよく語りだします。どこの地域の人も、どんな世代の人も、みんな熱い想いがあります。いい意味で違いはないです。

大阪は予想通り盛り上がるし、神戸も東北もすごく盛り上がります。

 

 鈴木先生は個人的にゼミや熟議を重ねたり、また文科省で教育に関わったりされていますよね。これから教育に関して進めていきたいことはありますか?

 

日々こういう生身の出会いを重ねていると、半歩半歩だけども、すごく充実感があります。特に若い人は、例えば今日の午前中と今とでは違っていると思うんですよね。人がどんどん成長して変わっていく…。その現場にずっと立ち会い続けたい。熟議で語り合い何かを得た若い人たちが、すぐ何か始めるかもしれないし、10年後に行動を起こすかもしれません。いつやるか、どんなことをするかはわからないけれども、熟議でみんなに必ず何か影響を与えていることを実感します。

 

 行動するきっかけの種みたいなものですね。

 

きっかけの種ですね。それをじわじわ地道に広げていきたいです。

今日200人以上来ていましたよね。結構、校長先生や教師が多かったんですよ。校長は現場に5・600人いるわけでしょ。教師も30~40人の生徒を受け持っているし、これから何十人何百人と受け持っていく。そう考えると、今日の200人を呼んだフォーラムは、2万人、あるいはもしかしたら20万人くらいに影響を持つといえます。

 

また、ROJEの人もこれから教育産業に行く人も学校現場に立つ人もいます。ROJEのメンバーも、また未来の何百人に影響を与えうる。

 

今日来場者とも話していたんだけど、人間かならずどんな新入社員でも裁量権はあります。もちろん、偉くなればなるほど裁量は大きくなるわけだけど。

その裁量の中で漫然と真ん中を歩くのか、それとも一番より良いと思われるぎりぎりのところまで裁量を発揮してポジションを取るのかで、船と同じで、みんなが右舷(うげん)にぐっと寄ったら変わってきます。一人ずつは小さいけれども、みんながちょっとずつ寄ったら進む進路が変わる。この積み重ねが大事なんだと思います。

 

そのうち、最初は小さな船だけども、だんだんサイズが大きくなってきて、5トンの船、10トンの船・・・。最後は30万トンのタンカーになるわけですね。

その中の、与えられたコース取りの中で、一番みんなが共有する価値観をみんながとればいいと思います。

 

 一人ひとりは小さな力だけど、全体で大きな力を生むわけですね。小さな力を集めるためにはうまく連携していかなければなりませんよね。

 

力は集めなくていいんだけど、「連動」したほうがいいです。

 

「連動」とは具体的にどういうことでしょうか。

 

集団行動する必要はありません。同じ思いをもった人が自発的に、熊本でも広島でも京都でも、また学校でも大学でも会社でも。同期、同調していくことです。

 

これは新しい社会イノベーション理論なんだけど、今までは量でもって置き換えなければいけなかった。だから動員が必要でした。でも、相転移っていうのは、変曲点ポイントがいろいろランダムにあって、そこが連動して波が同期すると、とてつもなく大きなムーブメントが起こります。波の同期なんだよね。そこの周波数が合うとポーンとなる。

 

大事なのは、人の量ではなく、いかに人と周波数が合うか、同期するかです。

あらゆるシャフトが、ある目的・価値観をもって、小さくてもいいから、シンクロナイズすると大きな行動を起こしていけます。要するにハーモニーです。ハモらない時って、ノイズですよね。みんなが違う音を出していていいんだけど、それがハーモナイズするといい響きになります。それが『共鳴』。

 

 それは必ずしも同じ学生間で固まる必要はないということですね?

 

国も世代も超えていい。

あるハーモニー、ある和音を出す。それもパートは分かれていい。

ある種、文部省は低音パートだったりするわけです。学校現場は高音パート、教育委員会は中低音パートだったり、市町村教育委員会は男声合唱でいうとセカンドテンポルだったりします。

オーケストラで言えば、金管楽器だったり、弦楽器だったり、打楽器だったり。

 

 今後社会に出て行く私たちはシンクロしていく意識を持っていけばいいんですね。

 

そうですね。シンクロ。繋がっていってほしいです。

ハモった時の楽しさ、気持ちよさをまず実感してください。それを今後自分の関わる人に、ハモることの楽しさを伝えていってもらえればと思います。

 

-ありがとうございました

 

 

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