【講演録】鈴木寛先生ご講演


『~グローバル化の本当の姿~』

まとめ
・グローバル化は新しくて古い話。
・今、人々の「住む・学ぶ・働く」までがグローバル化している。
・ブランド化され、推されている「グローバル”経済”化」。経済第1主義に飲まれるな。
・経済以外の面で、世界中の人たちと協同してコラボレーションしていこう。

かんふぉ11

今の世の中、新聞やテレビを見ても「グローバル化」というキーワードが洪水のようにあふれています。情報洪水と言っているのですが、その原因の一端を作ったのは私かもしれない。私が2009年に文部科学副大臣をやっていたとき、政府がグローバル人材育成推進会議というものを作りました。そのときに「グローバル人材」という言葉を使い、その言葉がその会議を担当した私の思いとはちょっと違った形で世の中にどんどん広がっていきました。その広がりにはやや疑問を感じています。

今、色々な東京からキーワードが発信されていますね。それに対する人々の反応は大きくいうと、2つに分かれるのです。不安をかきたてて利益を得ようとするタイプAとにかく東京から発信されたものは一切無視。それか否定する、タイプBの2つです。このどっちもダメだと私は思います。複眼的思考をして、色々な角度からとらえて欲しいです。

グローバル化の話というのは、新しくて古い話なのです。日本の歴史を振り返ると遣隋使や遣唐使の時代から、それこそ「グローバル化、どうする!?」「遣唐使やめる?」という状況だったのです。

それでは今のグローバル化にどう対峙していったらいいか。同志社大学設立の話を挙げると、新島襄が同志社をつくるときに京都の人はすごくて、京都のど真ん中にある御所の真北に異文化の極みを設立しようとしました。もちろん大論争がありました。大論争を経て、あの場所にキリスト教文化というものを入れて、色々な意味での近代化を切り開いた。これには色々な教訓が含まれていています。このような教訓があれば、今言っているグローバル化というのは屁でもないと思います。ぜひそういう心を持って欲しいと思います。

既に「もののグローバル化」は達成しています。戦後は、若干の農産物などの例外品目はありますけどものの輸出入がどんどん自由になってくる時代でした。皆さんの体はもうすでにグローバル化しているのです。なぜなら、輸入食品や輸入食材を全く食べていない人は居ません。1980年代には「金融のグローバル化」がありました。皆さんも貯金をしていたりクレジットカードを使っていたりと、グローバルな金融の中に組み込まれていると思います。それから、最近の大きな波は何かというとインターネットによる「情報のグローバル化」ですよね。ブラジルからでも情報は得られるし、距離というものを感じさせなくなりました。

今何が起ころうとしているかというと、「人のグローバル化」が起ころうとしています。これも、人の移動については既に経験済みです。1985年の9月にプラザ合意があり、そこで円の為替レートが大きく変わりました。だから50歳以上の人は一部の例外を除きみんなグローバル化出来ています。なぜなら、それまで大学4年間貯金してやっと1回海外旅行に行けたのが、プラザ合意以降春休みや夏休みのたびに行こうと思えば自由に行けるような時代になったのです。

これから起ころうとしているのが「居住のグローバル化」です。人が住むということであり、学ぶということであり、働くということがグローバル化します。今の大学生でいうと、学年の1割ぐらいの人が日本と外国の両方で住んだり学んだりということになるというようなシミュレーションがあります。もう1つは、社会に出ると必ず、日本語や日本文化に慣れ親しんでいない人と仕事をする時代が来るであろうということ。そういうことを受け止めて、その流れを理解し流れの中で自分をしっかりもって幸せに生きてほしいと思います。

ただ、グローバル化といったときに人の移動・人の居住、働く場というものに気を取られるわけですが、その後ろ側にあるのはグローバル経済です。僕が「卒近代」と言っている背景にあるのは、お金は大事ですがそれは全てではないということです。この手段と目的の倒錯というのが私はものすごく気になるのです。私は経済を否定する立場ではありませんが、経済の行き過ぎは気になります。否応なしにグローバル経済のなかに組み込まれてしまったわけです。

今の経済は実体経済化から、記号商品になっています。「グローバル化」というキーワードですら、記号商品に入っているのです。消費できれば、あるいは投資の対象であればなんでもいいから消費・浪費させてしまうという形で経済が回っています。その超高速の、濁流のような流れの中で、1人1人の人間社会や地域が迎合させられなければならない状況に私は大きな危惧をもっています。私にとってのグローバル化、1人1人にとってのグローバル化は違うはずなのに、「グローバル化」を記号化・ブランド化しているのです。

 グローバル化というのは否応なく進展してくるグローバル経済化。一方で、「なんでも経済・なんでも市場」ということに対しておかしいと思って居る人たちは世界中に多くいます。その人たちがつながって、協力して協動してチャンスを広げているのだけど、そのような人は相当意識して努力して頑張らないといけません。

そういうことを意識したり試行錯誤したりする人たちのコラボレーションがうまくいくことのお手伝いが出来たらいいなと思っているからこそ、私は若い人たちと色々なこと(熟議やNPO支援など)をしているのです。

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